Q1.インフルエンザってどんな病気?
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インフルエンザウイルスが、鼻、咽頭(のど)、気管支に感染することによって起こる上気道の炎症のことです。 |
「インフルエンザ」の語源
16世紀のイタリアの占星術師たちが、冬季に流行し春に終息する周期性から、流行を星の運行や寒い気候の影響によるものと考え、「影響」を表すラテン語「influenctiacoeli」にちなんで「influenza(インフルエンザ)」と呼んだことに由来すると言われています。
この言葉が18世紀の英国で流行した際に英語に持ち込まれ、その後世界に広まりました。
症 状
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悪寒、全身倦怠感、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が強く、合わせて、のどの痛み、鼻汁、咳なども見られます。
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これらの症状は通常2〜3日続きますが、場合によっては5日を超えることもあります。
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高齢者や乳幼児では肺炎や脳炎などを合併することもあり、最悪の場合は死に至ることもあります。
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Q2.インフルエンザとかぜはどう違うの?
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インフルエンザとかぜとの比較
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インフルエンザ
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かぜ(かぜ症候群)
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ウイルスの種類
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インフルエンザウイルス
A型、B型
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ライノウイルス、
コロナウイルスなど
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発
熱
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急な高熱38〜40℃
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無い あっても微熱
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主な症状
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咳、のどの痛み、悪寒、頭痛、全身倦怠感など
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くしゃみ、鼻水などの鼻炎
症状が主体
咳、のどの痛みは軽度
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発
病
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急激に発症
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ゆっくり
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全身症状
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高熱、筋肉痛・関節痛などの全身症状が強い
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全身症状は軽い
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合併症
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肺炎などの重症合併症が多い
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肺炎などは少ない
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Q3.インフルエンザウイルスって何もの?
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- インフルエンザウイルスは、直径が1万分の1ミリ(100nm)の球形のウイルスです。
- ときに1,000nmほどの長糸状になることがあります。
- 右図は新型インフルエンザの電子顕微鏡写真です。
- ヒトに感染するインフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3種類あります。このうち流行を起こすのはA型とB型です。
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インフルエンザウイルスの構造
ウイルスの表面には2種類のトゲ状の突起があり、赤血球凝集素【ヘマグルチニン(HA)】
とノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれるタンパク質です。
これらはウイルスの感染において重要な役割をはたしています。
赤血球凝集素(HA)
インフルエンザウイルスがヒトの咽頭(のど)などに入った際に、HAが咽頭の細胞表面
に結合して、その後にウイルスが細胞の中へ侵入します。
ノイラミニラーゼ(NA)
咽頭(のど)に侵入したインフルエンザウイルスは、細胞の中で増殖します。
増殖したウイルスが次に細胞の外に飛び出す際に、NAがウイルスのHAと細胞表面
との結合を切り離すことによってウイルスは細胞の外へ放出されます。
- A型では、HAやNAにも色々な種類があり、これまでにHAは16種類、NAは9種類が確認されています。
- このような亜型はH1N1のように略称で表現され、これらのうちヒトの流行の原因になることが分かっているのは、Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)などです。
- 話題になったトリインフルエンザは、H5N1です。
- A型はHA、NAの種類が非常に多いので、それぞれが、毎年少しずつ形を変えながら流行を続けています。
- B型はHA、NAとも各1種しかありません。
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Q4.インフルエンザの感染と増殖
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吸着
インフルエンザウイルスのHAは、咽頭や気管支の内側にある上皮細胞の表面に存在するレセプターと結合します。
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侵入
ウイルスが細胞内に取り込まれます。
ウイルスが結合してから細胞内へ侵入するまでに要する時間は数分〜20分といわれています。
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膜融合
細胞内にまんまと侵入したウイルスには、ウイルス膜と細胞膜との融合がおこります。
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脱殻
それまで被っていたタンパク質の殻を脱ぎ捨てます。
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転写・複製
自らの遺伝子情報を「細胞の核」へ送り込みます。
ウイルスから遺伝子情報を送り込まれた「細胞の核」は、完全にウイルスに乗っ取られ、本来の働きを忘れて、ウイルスの遺伝子情報を転写・複製(いわばコピー)し始めます。
インフルエンザウイルスに乗っ取られた細胞は、ウイルスをどんどん増殖させて、最初は1個だったウイルスが8時間後には100個に増え、16時間で1万個を越え、24時間後には100万個にまで増殖します。
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出芽・放出
1個の細胞の中でそこまでウイルスが増殖するわけでなく、複製が終わり「成長したウイルス」が、乗っ取った細胞の中から外へ飛び出し、そばにある、まだ「乗っ取られていない細胞」に再び侵入して、増殖することを繰り返します。
この「成長したウイルス」が細胞の外に飛び出すときには、NAが関与します。
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◆抗インフルエンザウイルス薬
ウイルスのHAと細胞表面のレセプターとが結合したままでは、ウイルスは細胞の外に飛び出すことが出来ずに細胞の表面で死んでしまいます。
抗インフルエンザウイルス薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(商品名:リレンザ)はNAを阻害することによって、ウイルスの増殖を抑制します。
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Q5.新型インフルエンザってどんな病気?
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- 新型インフルエンザは、季節性インフルエンザと種類が大きく異なるインフルエンザで、一般に国民が免疫を持っていないために、全国的かつ急速にまん延するので国民の健康および生命に重大な影響を与えるおそれがあるものをいいます。
- 今般、メキシコや米国等で確認された新しいインフルエンザを新型インフルエンザA(H1N1)と位置づけています。
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Q6.新型インフルエンザA(H1N1)の症状と特徴
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- 主に10代後半〜20歳代に感染患者が多い。
- 高齢者では患者が少ない。
- 74歳以上の40%で抗体陽性。
(1935年以前に、新型に似たウイルスの感染を受けている?)
- 季節性インフルエンザよりも伝播力は強い。
- 弱毒型ウイルスである;病原性は季節性インフルエンザと同程度。
- ほとんどの患者は軽症で、症状は季節性インフルエンザと似ている。
- 下痢、嘔吐がやや多い(10%)。
- 全身感染を起こさない。
- 慢性基礎疾患(糖尿病、心臓病、呼吸器病、人工透析など)、妊婦では重症化傾向。
上記のような持病がある人は、手洗いの励行、うがい、人混みを避けるなどして感染しないように注意してください。
- 健康な青年層でも、まれに重症肺炎を起こす。
- 早期治療は有効。
- 抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザは有効。
- 現在の季節性ワクチンは有効ではない。
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Q7.新型インフルエンザの感染の広がり方(感染経路)
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- 新型インフルエンザは、ほとんどの人が免疫を持っていない、感染力が強いなどの理由で、
通常のインフルエンザに比べると、多くの人が感染すると考えられます。
- 新型インフルエンザの感染経路は通常のインフルエンザと同様で、咳やくしゃみとともに放出されたウイルスを吸い込むことによっておこる飛沫感染があります。
- ウイルスが付着した物を触れた後に目、鼻、口などに触れることで、粘膜・結膜などを通じて感染する接触感染も考えられています。
- 空気中を漂うウイルスを吸い込むことにより感染する空気感染もあります。
飛沫感染
- インフルエンザの感染者がくしゃみや咳をすると、インフルエンザウイルスを含んだ小さな粒子が周囲に飛び散ります。この小さな粒子を「飛沫」といい、1回のくしゃみで、約200万個、咳で約10万個も飛び散ります。
- 感染者からおよそ1〜2メートルの範囲内に居ると、直接、この飛沫を吸い込んで、インフルエンザウイルスに感染してしまいます。
- 目などの粘膜からでも、インフルエンザウイルスが侵入し、感染することもあるようです。
接触感染
- インフルエンザウイルスを含んだ飛沫を手で触れることによって起こる感染です。
感染者の手に付着した飛沫が、ドアノブなどの触った物に付着します。
他の人が、このドアノブを直後に触ると手がウイルスに汚染されます。
人は無意識のうちに手を目、鼻、口などに持っていくので、その手で目、鼻、口などを触ると、粘膜からウイルスが侵入して感染が起こる場合があります。
- ドアノブ以外にも、食器、電話、電車のつり革などに感染者のウイルスが付着したら、後からそれを触った人の手に付着する場合があります。
- マンションの同じ階で流行した例では、エレベーターのボタンが原因と言うこともありました。
- インフルエンザウイルスは乾燥した場所でなら、長い時間、生きつづけることができます。
上記の物に付着したウイルスは、ある程度の感染力を持ったまま数時間生き続けます。
(少なくとも3時間、ウイルスの好む状態で、ほぼ24時間程度)
したがって、インフルエンザの予防には手洗いが大変重要なのです。
空気感染
- インフルエンザウイルスは感染者のくしゃみや咳で飛沫として飛び散りますが、これらの飛沫の水分が蒸発すると、その中にいたウイルスはすぐには消えず、空気中を数時間は漂うことになります。
そして、そのウイルスを吸い込むことにより感染することもあります。
したがって、感染者と同じ部屋などにいた場合には2m以上離れていても、インフルエンザウイルスを吸い込む可能性があります。
- 空気感染を起こす場合の条件として、空気が低温で乾燥していることです。
ちょうど冬の時期に当てはまります。
空気中に漂っているウイルスにとって、冬は好ましい環境であり、寿命も長くなります。
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Q8.新型インフルエンザの予防法
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- 新型インフルエンザの予防法といっても、基本的には季節性のインフルエンザ予防対策と同様です。
インフルエンザの時期になると毎年言われている基本的な予防法ですので、これを機に習慣的に行うように意識を高めてください。
- 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることですが、ワクチンを接種したからといって必ずしもインフルエンザを予防できるわけではありません。
したがって、ワクチン接種に加え、以下のようなことに気をつけると、より効果的に予防ができます。
手洗い
- 最も基本的なことですが、これが一番重要です。
感染を100%防ぐことは出来ませんが、感染率はぐっと減ります。
- ウイルスが付着した場所を触った手で鼻や口を触ってしまうと接触感染する恐れがあります。
不特定多数の人が触れた場所を触った後には必ず手洗いを行いましょう。
- 手洗いは、外出した後だけではなく、可能な限り、頻回に行いましょう。
- 手洗いはせっけんを使って15秒以上じっくりと行いましょう。
- 指と指の間や手首、親指のまわり、爪の間までしっかりと洗うように心がけましょう。
- 洗ったあとは、清潔なタオルや布などで十分に水分を拭き取りましょう。
うがい
- うがいが有効な予防法かどうかは賛否が分かれます。
- インフルエンザウイルスが体内に侵入し、喉や気管支の内側にある細胞に付着してしまった場合、細胞の中へ侵入するのに要する時間は、数分〜20分といわれています。
- 流行期でウイルスが空気中に多数ある場合、単純計算では、うがいした後、数分〜20分以内に次のうがいをしないとウイルスの侵入を防止できないことになります。
- しかしながら、うがいはのどを潤し、乾燥を防ぐ効果があるので、多少の意味はあるでしょう。
マスク
- インフルエンザに感染した人において、マスクは、咳やくしゃみの飛沫が飛散するのを防ぐので、他人に感染するのを防ぐ効果が高いとされています。
したがって、咳やくしゃみ等の症状のある人は、マスク装着は義務だと思って必ず着用するようにしましょう。
- 家族・友人・同僚など大切な人に感染させないという役割があることをしっかりと覚えておいてください。 →
「咳(せき)エチケット」
マスクの種類
- 不織布(ふしょくふ)マスクは原則使い捨てです。
1日1〜2枚を目安に使用してください。
- 外出した後、マスクの表面にはウイルスが付着している可能性がありますので、なるべくマスクの表面を触らないようにし、捨ててください。
マスクを捨てた後も手洗いをするようにしてください。
- 不織布とは、「織っていない布」という意味で、繊維あるいは糸等を織ったりせず、熱や化学的な作用によって接着させた布により製造したマスクです。
- 一方、感染予防の目的でマスクを着用するのは、人の多い場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では1つの予防策と考えられますが、屋外などでは、相当混み合っていない限り着用する効果はあまりありません。
マスクによる予防効果が期待できないわけ
- インフルエンザウイルスの大きさは1ミリの1万分の1です。
したがって、マスクの正面がいくら高密度のフィルターであっても、マスクの跡が付くほど密着していなければ、ウイルスはマスクの横から、いくらでも侵入可能です。
- その上マスクをすると、大抵の人は息苦しさから鼻呼吸をしないで口で呼吸します。
鼻には、取り込んだ空気を加湿・除菌してくれる副鼻腔などの器官がありますが、口から吸い込まれた空気は、ほぼ直接、気管に流れるので、ウイルスも入り込みやすくなります。
- 従って、マスクをする事によって正面からウイルスを含んだ空気を防ぐ事は可能かもしれませんが、上記に挙げたような「マスクの欠点」を加味すれば、マスクによる感染予防効果はほとんど期待できないかもしれません。
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優先すべきことは、咳や発熱などがある人に近づかない、手指を清潔に保つことです。
咳(せき)エチケット
- 周囲の人からなるべく離れましょう。
咳やくしゃみの飛沫は約2メートル飛ぶと言われています。
- 咳やくしゃみをするときは、他の人から顔をそらせ、ティッシュなどで口と鼻を覆いましょう。
他の人に飛沫をかけないように心がけましょう。
マスクをしていない場合には、ティッシュなどで口と鼻を覆うことも大切です。
使ったティッシュはすぐにゴミ箱へ捨てましょう。(蓋付きのゴミ箱がよい)
- 咳やくしゃみを抑えた手を洗いましょう。
咳やくしゃみを手で覆ったら、手を石鹸で、ていねいに洗いましょう。
- マスクを着用しましょう。
咳やくしゃみが出ている間はマスクを着用しましょう。
使用後のマスクは放置せず、ゴミ箱に捨てましょう。
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Q9.どんな症状がでたら新型インフルエンザを疑うの?
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- 38℃以上の発熱があり、咳やのどの痛み等を伴う場合にはインフルエンザに感染している
可能性があります。
- インフルエンザに感染している人との接触歴があるなども、感染を疑う上での参考になります。
- ただし、症状で新型インフルエンザと季節性インフルエンザを見分けることは出来ないと言われています。
- 持病のある人など、感染することで重症化するリスクのある方は、なるべく早めに医師に相談しましょう。
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Q10.医療機関を受診する際の心がけ
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- 受診前に、必ず電話で連絡をし、受診時間や入口等を確認しましょう。
・医療機関によっては、発熱患者を診察する時間帯を設定している場合があります。
・入口を別にしている場合があります。
- 受診するときは、マスクを着用し「咳エチケット」を心がけましょう。
- 公共の交通機関の利用を避けましょう。
新型インフルエンザなど発熱患者の診療をしている医療機関がわからない場合
・保健所などに設置されている発熱相談センターに電話して、相談しましょう。
発熱患者の診療をしている医療機関がわかっている場合
・医療機関に電話をして、受診時間などを聞きましょう。
かかりつけの医師がいる場合
・かかりつけの医師に電話をして、受診時間などを聞きましょう。
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