くらしに役立つ医療
 
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インフルエンザ予防接種Q&A

<1>インフルエンザの予防接種は効果あるの?

 インフルエンザ予防接種の効果については、『せっかく接種したのにインフルエンザにかかった』など批判の多いものであります。これはインフルエンザの種類の多さに原因があります。まずインフルエンザには大きく分けてA型、B型、C型の3種類があります。そしてA型だけでもさまざまな亜型があり、また突然変異による変化などを考えると、すべての型に共通に効果のあるワクチンは作成できないからです。日本では、毎年WHO および日本国内の流行情報などに基づいて、次のシーズンのワクチン製造株が選定されています。数多い株の中から3種類程度の株を選び、ワクチンが製造されますが、流行するインフルエンザは毎年数種類あり、すべてを完全に一致させることは至難の業です。ただし、完全に型が一致しなくても、そこそこ近い型ならば効果はあるとも考えられています。
 最近のデータでは予防接種をすることによってインフルエンザにかかった時の死亡率を半分に下げたというものがあります。これは、予防接種をしていても死亡したケースもあるということにもなりますが、すくなくとも死亡するほどに重症化するケースを減らすことはできるということです。
 以上のことからはワクチンの感染阻止効果や発症阻止効果は必ずしも有効とはいえないということになりますが、重症化阻止効果や死亡阻止効果はあると考えられています。
 結論を言えば、予防接種をしているからインフルエンザにかからないという考え方は間違いですが、重症になるのを防ぐ効果はあると考えてよいでしょう。

 
<2>予防接種は何回受ければいいの?
 インフルエンザ予防接種は以前は2回受けることとされていました。しかしながら、65歳以上の人を対象とした最近の研究で以下のような事が言われています。
  『高齢者の多くは過去に何度かインフルエンザに罹患しており、基礎的にある程度インフルエンザに対する抵抗力を持っている。そのため高齢者は1回だけの予防接種でかなり有効な抵抗力を獲得できる。予防接種を1回だけした人と2回した人を比較すると、2回受けることでやっと有効な抵抗力を獲得できた人は5%程度にすぎなかった。』
 すなわち5%程度の人には2回接種を受ける価値がありますが、他の人にはあまり意味がないということになります。これが、高齢者は1回の接種でよいのではと考える根拠です。ただし体が弱く、念のために2回受けておきたいという人はそうしてもかまいませんし、結局のところ、予防接種を受ける病院の先生と相談して決めればよいのではないかと思います。
 若年者、特に12歳以下の小児はもともとの基礎免疫力が少ないと考えられるので、積極的に2回受けたほうがよいと考えられます。
 
<3>予防接種を1回しか受けない場合、意味ないの?
 時にこのような質問をしてこられる患者がいます。 『予防接種を1回しか受けないのなら、受けないのと同じで意味がないんですか?』
  <2>で書いたように、そんなことはありません。2回受けるのはより強い抵抗力を付けるためです。1回接種でも抵抗力はある程度付きます。受けない場合と比べれば、たとえ1回でも受けておいた方がよいでしょう。
 
<4>副反応はないの?
 正直言って副反応の出る可能性はあります。ただし重篤な後遺症や命にかかわるような副反応は極めてまれで、安全性は高いと言われています。
 卵アレルギーのある人の場合、ワクチンの中に卵の成分が入っているため、アレルギー反応を起こす場合があります。明らかな卵アレルギーがある人の場合、無理して予防接種はしないほうがよいのではないでしょうか。卵アレルギーがなくても予防接種にアレルギー反応を起こす場合はあります。最も重篤なアレルギー反応ではショック状態になることもあると言われていますが、これは非常にまれな副反応であり、めったになるものではありません。重篤な副反応には他にも急性散在性脳脊髄炎(ADEM)というものも報告はありますが、これも極めてまれなものです。
 比較的多い副反応としては肩(接種部位)の発赤や腫脹があります。これは 11.6%の確立で出るとのデータがあります。全身反応としては発熱が有名で11.3%と いうデータがあります。これらのデータには微熱など、ごく軽症なものも含まれますし、実際治療を必要としない程度の軽症の副反応がほとんどだったということです。
 以上の副反応はほとんどが接種後数日(2〜3日)のうちに起こります。1週間以上たってから副反応が出ることは、極めてまれです。
 
<5>2回接種を受ける場合、その間隔はどの程度空ければいいの?
 1回目と2回目の間隔は1〜4週間と言われています。しかしながら人の免疫反応を考えた場合、できれば2週間以上はあけたほうが、より強い抵抗力が獲得できると考えられます。予防接種の開始が遅くなってしまった、長期の旅行に行くので2回目がいいタイミングで受けられないなど、何か事情がある場合を除いて2週間以上はあけたほうがよいかと思います。ちなみに1回目と2回目の間隔は4週間あけるのが最良だと考える人もいます。
 
<6>予防接種の開始時期は?
 理想の開始時期は、その年のインフルエンザの流行次期によって変わってくるものと考えます。予防接種を受けるとだいたいその2週間後から体の抵抗力が発揮され、2ヵ月後に抵抗力のピークがあると考えます。インフルエンザが例年通り12月後半頃から流行しはじめると考えれば、その2ヶ月前、10月後半から11月前半が理想的な開始時期ではないでしょうか。昨年は流行の開始が1月末でしたので結果から見ればもう少し遅くに予防接種を開始するのが理想だったと言うことになりますが、これは、流行が始まるまでわからないことなのでなんともいえません。とりあえず、今までの経験から考えれば、10月後半から11月前半が理想的な開始時期ということになります。
 
<7>子供にだけ予防接種させたいんですけど?
 わが子のインフルエンザを予防したいのなら、その子にインフルエンザをうつさないようにする努力をしてもいいかも知れませんね。そのためには家族みんなで予防に努めるのがよいのではないでしょうか。子供にうつすのは子供の友達だけではありません。会社や電車の中でインフルエンザをもらってきたお父さんからもうつります。できれば家族全員で予防接種を受けるのが理想だと考えます。
 
<8>生後まもない赤ちゃんにも予防接種はできますか?
 生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、一般にお母さんのお腹の中にいる間に胎盤を通してもらう、お母さんからの抵抗力によって体は守られています。そのためインフルエンザにもかかりにくいと考えられています。また6ヶ月未満の赤ちゃんは、まだ自分の免疫が発達しておらず、予防接種をした場合に抵抗力をきちんと獲得できるかどうかわかりません。新生児に対するインフルエンザ予防接種の効果や安全性のデータを知りませんのであまりお勧めはしません。6ヶ月以降の赤ちゃんなら、免疫力が発達してくる時期なので、予防接種をした場合の効果(抵抗力の獲得)は期待できます。予防接種をしてもいいのではないかと考えます。もしも子供が小さくて接種するのが不安なら、<7>で書いたように外堀を固める発想で 、他の家族が予防接種をしてはどうでしょうか?赤ちゃんの回りにインフルエンザの人が来なければ、うつる確立はずっと減ります。
 
<9>予防接種の料金は?
 料金は個々の医療機関で独自に決めるようになっています。直接医療機関に聞いてみるしかありません。 ただし、現在65歳以上の高齢者に対する予防接種料金の助成制度が審議中です。この法案が通れば65歳以上の方はおそらく1000円程度で1回、予防接種を受けられることになります。(2回目を受ける方は全額自費です。)11月中には法案が決まると言われていますので、65歳以上の方は、いま少し待ったほうが安く接種できていいように思います。
 
<追記>

 最近のインフルエンザ研究はめざましい進歩があり、現在の最新の考え方も変更される場合があります。このQ&Aはあくまでも2001年10月現在の考え方だと理解して下さい。

2001.10.24

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